養老町上方(うわがた)に白鳥神社(上方)の神宿制(かみやどせい)という独特の儀礼が今も残っている。
上方だけにその起源が中世にまで遡る古い儀礼が残ったのは、上方の住民の中に何事も熱心に辛抱強く続ける気風と、長く続いた習慣を変えることが苦手な性質が土壌にあったからだと思う。
神宿制は昔から地主、小作の関係はなく役が回ってきた。
上方には2012年現在42戸あり、順番に神宿を務める。神宿に決まった者は無上の光栄である反面、準備や決まり事が多くあり大変である。若い人には、光栄なことだと思うように言っている。
御宿替えの儀は毎年11月18日に行われる。御宿替えの祝詞をあげた後、手で裂いた小さな長方形の紙に一枚ずつ氏子の氏名を書き、紙をねじってくじを作る。御幣でくじを撫でると、いくつかのくじが御幣にくっついてくるので、御幣を軽く払い、最後に残ったくじの者が次の神宿を勤めることとなる。神宿の選に当ったものは夕刻身を清めてお神酒をあげ、心身を備えて自宅の神棚に報告をする。そして、白鳥神社に羽織・袴で出向いて報告をする。
神移しの儀は11月29日の夜中に行われる。次の神宿の人は夜、風呂に入って清潔にして旧神宿に御印(みしるし)の鰐口を迎えに行かなければならない。
神宿の者は年始に向けて12月の寒い時期に白鳥神社境内の清掃をしなければならない。
年末から正月にかけて家主は部屋に籠り、家族でさえ一切入れなくなる。暖房や食事を作る火は別火(べっか)といい、家族が使うものとは別の独立した火を使う。電気を使って食事を作るのも禁忌とされる。
表示位置は白鳥神社(上方)を示している。