口ヶ島(くちがしま)地内を流れる金草川(かなくさがわ)にはファブリダムという堰が設けられている。このダムは発動機でゴムを膨らませて水をせきとめたり、萎ませて水を流す仕組みで、岐阜県が採用した。
金草川の上流には押越、下高田といった地区があり、用水が必要な時期は調整をしあって金草川からそれぞれの農地に水を入れる。押越では逆水樋門の上流側にある樋門を操作して金草川から用水を確保する。口ヶ島では時期になるとファブリダムのゴムを膨らませて金草川から農地に水を引き入れる。
口ヶ島の元農業委員のA氏が若い時には、石畑のB氏に現在のファブリダムよりも簡易な堰を作って貰い、水を止めて用水を確保していた。
ファブリダム設置は岐阜県の金草川改修の最後の仕事で、その後金草川改修は養老町で行っている。
ファブリダムは関西に多いが、岐阜県では珍しい構造のダムである。
A氏が口ヶ島農業生産組合の役をやっている時に、一度だけ修理して貰った。現在も管理は口ヶ島で行っていて、ファブリダムの管理係がいる。
設置当時はファブリダムを使う際に電気で動かしていた。電気を使うと電気代が口ヶ島負担であったので、その後給油式のコンプレッサーを使ってゴムを膨らませるようになった。
現在は老朽化しているが、何とか維持できている。
ファブリダムは岐阜県内には二か所あるだけの珍しいダムである。原動機はエンジンで、コンプレッサーにより空気を直径70cmの合成ゴムでできたチューブに送り、川の中心でチューブを膨らませる。それによって川が堰き止められ、ダムとなる構造である。ダムの必要が無い時は空気を抜くと川の水が流れるようになっている。表示位置はファブリダムを示している。