養老町大巻高柳出身の山田貞策(やまだていさく)は大巻村村長・養老郡郡会議員・岐阜県議会議員などを歴任された。貞策はまた、様々な事業に取り組んでおり、主だったものだけでも福島県の八沢浦干拓事業(やざわうらかんたくじぎょう)、養老町白石の開墾、大巻の水害予防と排水機の設置、薩摩義士顕彰会の設立、養老自動車設立、朝鮮半島での農場経営など多岐にわたる活躍をされていた。
貞策は同居されていたお孫さんからみてもとてつもないバイタリティをもたれていた。大巻村のために水門を作る際もあちこちに働きかけて大変忙しそうにされていた。山田家のお墓に向かう途中に貞策が設置した水門の跡だけが残っている。
山田貞策は水害を食い止めるため船頭平閘門(せんどうだいらこうもん、愛知県愛西市立田町福原)にも協力をされていたといわれている。貞策邸の建物の一部を提供された。
貞策は昭和13年(1938)頃に今尾橋の建設にも尽力していた。お孫さんは今尾橋の渡り初めに出席し、「これを作ったのか」と感心した記憶がある。
貞策は株にはそれほど投資していなかったようである。恐らく損失のほうが多いくらいだったのではないだろうか。
お孫さんによれば、貞策は朝鮮半島で会社を興したと聞いているが、詳しいことは資料もなく分からない。
貞策は「子供の教育費だけ残れば良い」と言い、自分の財産が無くなるほど、様々な事業に私財を費やした。
貞策は「忍」という言葉を息を引き取るまで大事にされており、よく口にしていた。「忍」の文字にはとてもこだわりがあり、「何事も忍だ」と言われていた。
山田貞策はとても子煩悩で、お孫さんの鷲野氏もかわいがってもらった。ご子息の奥様にオルガンを買って、「嫁入り道具に持って来た琴よりもオルガンを引いて欲しい」と頼んだ。琴もとても立派なものであったが、修徳館に琴は似合わない為オルガンを好んだのであろう。また相馬女学校に通っていたお孫さんには「これからの世はピアノだ」と言いピアノを習うよう勧めた。
貞策は身体は丈夫で杖は必要ではなかったが、装身具としてステッキを大変気に入っており、何本も所有していた。フロックコートに帽子をかぶり、ステッキを持ちとてもおしゃれであった。ネクタイの結び方が分からず、着けネクタイを着用していたらしい。あの時代には珍しく燕尾服に蝶ネクタイを着けることもあったが、それも着けネクタイであったかどうかは分からない。観菊会に招待されたこともあり、唯一貞策氏が着帽されている写真が残っていた。
貞策は様々な事業に私財を費やしていたが、ご子息は貞策のことを「人の為に全財産を使い果たしていき、本望であろう。自分はちゃんと学校を出ているからなんとかなる。」と言っていた。
山田貞策が福井県から養老町白石あたりに開拓者を入植させたといういわれがあるが、詳しいことは不明である。
鷲野氏は貞策が豆馬亭に宿泊したという記録や話は聞いているが、一緒に行ったことはない。
貞策は終戦間近の頃、大巻の堤防上で無灯火の自転車にはねられ、堤下に転落して腰骨を損傷されたのが原因で昭和19年(1944)7月に亡くなられた。当時は敵機の夜間空襲に備えて灯火管制が敷かれていたため自転車も無灯火であったのであろう。また、現代ならすぐに救急車を呼べるがこの頃は十分な治療、手当ても受けられずに骨折からくる内臓への悪影響があったことも考えられる。
村人は山田貞策の希望を叶えるべく病床の山田貞策を戸板に乗せて、上にはフロックコートを掛けて周辺の田んぼを見せて回ってくださったそうである。その後すぐに貞策は息を引き取ったが人の為に尽くし、本望な人生だったのではないだろうかとお孫さんは思っている。
貞策の葬式の際には農林大臣から電報が届いていた。
山田貞策はキリスト教に入信したという説もあったがそれは村人の結婚式をキリスト教式に執り行うなどしていたためで貞策自身はキリスト教の信徒ではない。詳しくは分からないがおそらく真宗高田派の門徒である。
貞策氏の弟で、正夫(まさお)氏という方がいる。貞策は正夫氏の勧めでキリスト教に入信したのではないかという話もあるが、真偽は不明である。
貞策の子孫としては長男利貞氏の他にミサオ氏(漢字不明、女性)がおり、ミサオ氏の娘に鷲野医院の近くのジョウレン寺という寺に嫁入りした藤原テルコ氏がいる。テルコ氏の娘がセイコ氏である。ミサオ氏もその婿のシゲハル氏も亡くなっており、血縁関係がよく分からなくなってきている。
テルコ氏の兄妹であるサダコ氏(名前の記憶不明瞭)が南相馬市にいたが大震災の津波で家を失った。無事だったらしいが現在どこにいるのかは分からない。
山田貞策氏の修道館の位置は、今尾橋の南側、高柳のお宮さんの南だった。空色の屋根で壁はクリーム色の横板であったように思うが、病院を開業していたかどうかは不明である。その病院はひょっとしたら池辺の平松医院のことではないだろうかと思う。

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